俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
「倉瀬さん、ビール注ぎましょうか？」

奈々はそう倉瀬に声をかけながら、控えめに隣に座る。

倉瀬がまわりの男性よりも上品なスーツを着こなしているように見えるのは、社長の息子というフィルターで見てしまうからだろうか。組んだ足が長く、スラリと堀ごたつの下へ伸びている。

一方奈々の私服は、大人しめのAラインのワンピースにカーディガンを羽織っており、普段の見慣れている制服の奈々よりも少し幼い雰囲気を醸し出している。妙な既視感を覚えた倉瀬は思わず奈々をじろじろと眺めた。

そんなことお構いなしににこやかにビールを勧める奈々に対し、まったく空気を読まない倉瀬はぶっきらぼうに聞いた。

「お前、どこかで……。いや、それよりお前、何歳だよ？」

「ちょっと倉瀬さん、女性に年齢聞くとか、完全にセクハラですよ！」

突然のセクハラ発言に奈々は頬を膨らませ怒ったように言うが、倉瀬はまったく表情を変えず飄々としていて奈々は何だか拍子抜けしてしまった。

「……まあいいですけどね。二十七歳ですよ」

呆れたように呟くと、倉瀬はあからさまに驚いた顔をした。

「二十七には見えないな」

「それ、どっちの意味です？上に見えるのか下に見えるのか……」

完全に不満そうな顔をして、奈々は倉瀬をじとりと見た。
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