俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
朋子達が楽しそうにおしゃべりに花を咲かせる中、奈々は黙々と料理を食べていた。別に楽しくないわけではない。ただ乗り気じゃないだけだ。朋子たちの手前それなりに相槌を打ち、参加してますよという雰囲気は醸し出すよう努力をした。

揚げ出し豆腐を食べながら、このお出汁真似したいな調味料何だろう等と考えていると、ふいに声をかけられる。

「奈々ちゃんは美味しそうに食べるよね」

「えっ？これ？美味しいですよ？」

馴れ馴れしく名前で呼んでくるこの男性の名前がまったく思い出せず奈々は焦る。いつの間にか食べることに夢中になりすぎて、最初に自己紹介された男性陣の名前が記憶の彼方に追いやられていた。

「俺、ご飯を美味しそうに食べる子タイプだな」

「美味しいのはいいことですよね」

「本当、奈々ちゃんは幸せそうに食べてるよね」

「そうでしょうか」

「確かに、奈々っていつも幸せそうに食べてるよね～」

「自分ではよくわからないけど……」

適当に答えているのにどんどん食いついてくる彼。それを合図にまわりも参戦してきてどんどん盛り上がる。先ほどまで一人黙々と食べていた奈々は突然の盛り上がりに戸惑ってしまう。

（無理に盛り上げてくれなくてもいいのになぁ）

奈々以外はお酒も入っているからか、みんなにこやかで楽しそうだ。奈々はこれが楽しいのかよくわからなかった。

確かにみんなでおしゃべりしながらご飯を食べるのは楽しい。けれどそこには男女の駆け引きが見え隠れしていて、特段彼氏がほしいわけではない奈々は場違いなのではないかと感じる。

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