俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
朋子たちは二次会に行くという中、奈々はそそくさと帰宅の途につく。月明かりの下、駅までの道を急いでいるとさっそくスマホが震え出して奈々は立ち止まって確認した。

【今日はありがとう。楽しかったね。今度は二人で会いたいな】

先ほど連絡先を交換した彼からのメッセージが届き、奈々はしばらく画面を見つめる。

「……だから嫌なんだよねぇ」

ボソリと呟くと何か返信しようと指を動かすもいい返事が思い浮かばない。

そもそも合コンなんて参加したくなかったし連絡先だって交換したくなかった。奈々は彼氏がほしいだなんてこれっぽっちも思っていないのだ。朋子たちは上手くいっただろうか。自分のことはさておき、彼女たちが一人でも上手くいくといいのにと願わずにはいられない。

「どうしようかなぁ、全然興味ないのに……」

奈々はスマホの画面に問いかける。
返事をすべきかどうか。悪い人ではなかったけれど、もう一度会いたいかと問われれば全くもって疑問だ。そもそも奈々は出会いを求めて参加したわけではないのだから。けれど社交辞令として、こちらこそありがとうございました、くらい返しておくべきなのだろう。

スマホを睨んでうんうんと考えあぐねているとおもむろにスマホが手から抜き取られ、驚きのあまり奈々は悲鳴を飲み込んだ。

「お前はバカか。お人好しも大概にしろ」

その声の主に、奈々はさらに驚いて口をパクパクさせる。
そこには奈々のスマホを高々と掲げた倉瀬が仏頂面で立っていたからだ。
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