俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
空港では現地ガイドが待っていた。奈々と朋子の他にも同じツアー客は五組ほどいる。

全員が揃ったところで現地ガイドを先頭にぞろぞろとバス乗場へと歩き出した。スーツケースをゴロゴロ転がしながら、奈々と朋子もそれに続く。

「やばい、英語だらけ!異国感満載!」

「はぐれないようにしなくちゃ。朋ちゃん、こっち」

「ちょっと待って~。きゃっ!」

人の波にのまれて朋子のスーツケースがぶつかり、同時に怒号が聞こえる。

「朋ちゃん大丈夫?!」

「な、奈々ぁ~」

振り向いた奈々の目に映ったのは、人相の悪いいかつい外国人に何か英語で攻め立てられ涙目になっている朋子の姿だった。

何か捲し立てられているが、英語が早くて聞き取れない。

「ど、どうしよう~。なんかスーツケースが当たっちゃったみたいなの。だから怒ってるのかも……」

「確かに、ブロークンって言ってる気がする……」

現地ガイドはずいぶん前を歩いていて、この騒動にはまだ気づいていない。

「眼鏡が壊れたから弁償しろってことじゃない?ほら、だって壊れた眼鏡持ってるし」

「あ、あの。眼鏡……グラス ブロークン?」

何となく単語を繋げてみるも奈々の日本語英語では何も伝わらない。むしろ相手の身振り手振りが大きくなって余計に焦ってくる。
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