俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい


いつの間にか昼休憩が終わっていつの間にか定時になっていた。
仕事をしながらもどこか上の空になっていた奈々は、終業時刻を知らせる鐘の音ではっとなる。あんなに流れていた涙をどうやって止めたのかも記憶にない。

「奈々、大丈夫?ずっとぼーっとしてるよ?寝不足なんでしょ?今日は早く帰りなよ」

「……うん。ありがと」

朋子に心配されるほどぼんやりしていたとなると仕事でミスをしていないか気になったが、とてもじゃないが今日は他に何もできそうになかった。

素直に帰ることにしようと荷物をまとめ始めてハタと気付く。鞄の奥底にはまだチョコレートが待機中の状態だったのだ。奈々は上から雑に荷物を押し込んで、見なかったことにした。

どこかで捨ててしまおう。
私の気持ちと一緒に。
なかったことにするんだ。
変に弄ばれる前でよかった。
渡す前に彼女がいるってわかってよかった。
誰にも何も気付かれなくてよかった。

じわっと目頭が熱くなり、慌てて拭う。

「お先に失礼します」

両隣に声をかけて、奈々は俯きながら足早にフロアから退出した。
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