俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい

「はあ?」

倉瀬は頭を抱えたくなる衝動に駆られた。
一体奈々は何を言っているのか。泣いた理由を聞き出そうとしただけなのに、なぜこんなことになるのだろう。どこで何を吹き込まれたのか分からないが、何かを誤解してるのは間違いない。

倉瀬は小さくため息をつく。

「彼女なんていない。この前のやつも彼女じゃない。お前には誤解されたくないって言ったよな」

「で、でも……」

「なんだよ」

「彼女がいるからチョコ受け取らなかったんでしょう?」

「はあ?」

潤んだ真っ直ぐな瞳で問われ、倉瀬は呆気にとられしばし言葉を失った。
奈々の肩を掴んだまま険しい顔になる。
そして思い当たる節を考える。

もしかして、奈々が泣いてた理由がコレなのだろうか。確かに今日、倉瀬は誰かからチョコを差し出されて断った記憶があった。奈々がそのことを言っているのだとしたら、盛大な誤解をしているとしかいいようがない。

「お前なぁ……」

倉瀬はガックリと項垂れた。

もしそれが理由で大泣きだなんて可愛いにも程があるし、奈々がここまで鈍感だとは思いもよらないことだ。

倉瀬は自分の気持ちが何ひとつ奈々には伝わっていなかったという事実にショックで膝から崩れ落ちそうな気分だった。
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