俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい

「うわぁ~」

奈々はバスルームの横に設えられた大きな洗濯機に、感嘆の声をあげた。一人暮らしのくせにとても大きくて高性能なドラム式乾燥機付き洗濯機だ。

「倉瀬さんもちゃんと洗濯するんだ」

倉瀬が洗濯をするイメージが全然湧かず、奈々は驚きを隠せない。だが、洗濯洗剤やハンガー、洗濯バサミが置いてあるのを見ると、自分でやっているのだろうと見受けられる。

“何でも勝手に使っていい”と言われたので、奈々は恐る恐る洗濯機のドアを開けた。

服を脱いで洗濯機に放り込みモードを洗濯乾燥に設定すると、出来上がり時間が【三時間】と表示される。

(三時間で乾燥までできちゃうんだ。最近の洗濯機ってすごい)

スタートボタンを押そうとして、ハタと気付く。

(下着……どうしよう?)

当然、下着の替えはない。途中寄ったコンビニでも歯ブラシしか買わなかった。

奈々は倉瀬に借りたバスローブを確認する。

結構な厚手で下着がなくても何とか大丈夫な気がする。それに三時間我慢したら洗濯が出来上がるのだから、待てないことはないだろう。

奈々は意を決して下着も洗濯機へ入れ、スタートボタンを押した。

倉瀬を待たせていることもあって、奈々はささっとシャワーを浴びた。

ドライヤーで髪を乾かしながら、鏡で自分の顔を見る。化粧も落としてしまったけど、素っぴんに引かれたりしないだろうか。

そう思いながら、洗面所やバスルームに女性の影が全くなかったことに内心ほっとした。

噂で聞いていた倉瀬と、奈々が自分で接して見てきた倉瀬は全く違う人物だった。倉瀬を知れば知るほど素敵で立派な人だと感じる。

だからこそ奈々は不安になる。

噂で聞く“女はとっかえひっかえ”という言葉が頭の片隅でくすぶるのだ。

もしかしたら奈々は、たくさんいる”倉瀬の女”の中の一人なのではないだろうか。
誰かと比べられたりしてないだろうか。

そう考えてしまうことに、奈々は頭をブンブンと横に振る。倉瀬はいつも奈々を優しく包んでくれている。本当に幸せな気持ちでいっぱいなのに、何故こんなバカな考えが生まれてしまうのだろう。

(本当に私でいいの……?)

何度も自問自答する。奈々はどうしても自分に自信が持てないでいた。
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