俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
最後に自分の姿を鏡で確認すると、大きめのバスローブが体をすっぽりと覆っていた。手ぐしで髪も整えてから、よしっと扉を開ける。
リビングに戻ると、倉瀬はソファで読書をしていた。奈々の姿を確認すると、パタンと本を閉じる。
「お先に頂きました」
「ああ」
「何読んでたんです?」
「ん?読むか?」
倉瀬は本を奈々に渡すと、
「じゃあ俺もシャワーするかな」
と言ってリビングを出ていった。
奈々はソファに座って渡された本を開いてみる。【経営学】という文字が目に飛び込んできて、それだけで難しそうな内容な気がした。奈々には全く馴染みのない分野だ。ページを捲る、それだけで眠気が襲ってきそうだ。
しんと静まり返ったリビングは奈々には広すぎて、手持ち無沙汰になってしまう。膝を抱えて顔を埋めれば、バスローブからほのかな洗剤の香りがした。
自分の家の洗剤とは違う香りに、奈々はまた胸がドキドキし始める。
(倉瀬さんのお家。倉瀬さんの香り)
きゅんと胸が高鳴ってドキドキと鼓動が早くなる。今日の出来事を思い出して、奈々は照れくさい気持ちでふふふと笑った。