俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
祐吾がふと目を覚ますと、愛しい奈々が自分の腕の中でスヤスヤと眠っていた。それは温かく心地よく幸せで、額にそっとキスを落とすとそのまままた眠りに落ちた。
次に目を覚ましたとき、もうベッドに奈々はいなかった。慌てて寝室を出てリビングの扉を開けると、室内にはコーヒーの香りが漂っている。
「奈々……?」
「あ。祐吾さん、おはよう」
身なりを整えた奈々が、キッチンからにこやかに顔を出した。あのね、あのね、と小動物のように寄ってくる。
「あの洗濯機すごいです!ほら、服が前よりふかふかに仕上がってる。着心地最高!うちにもあの洗濯機がほしいくらい」
ひとりキャッキャとはしゃぐ奈々に、祐吾は安堵の溜め息をついた。
「いなくなったかと思った」
「私が?祐吾さん、やっぱり甘えん坊さんですね」
「そうだろう?」
自分でも可笑しくて笑ってしまう。いい歳した大人が甘えん坊などと何を言っているのだと思ったが、奈々の前ではそれでいい気がした。自分を素直にさらけ出せる場所があることの心地よさを、祐吾は覚えたのだ。
目の前に奈々がいてニコニコ笑っている。
それだけで祐吾は幸せな気分になった。
「キッチン勝手に使っちゃいましたけど、よかったですか?」
「ああ。何でも勝手に使えばいいって言っただろ」
そう言ってダイニングチェアに座ると、湯気のくゆるコーヒーが出てくる。もうひとつマグカップを持って、奈々が対面に座った。
「あんなに立派な冷蔵庫があるのに全然食材入ってないし、置いてある食器も少ないしバラバラだし。どうやって生活してるんですか」
「はあ?一人暮らしなんてそんなもんだろ。だいたい自炊なんて滅多にしないからな。客だって呼ぶつもりはないから、食器もいらないだろ」
奈々の淹れてくれたコーヒーを飲みながら祐吾はぶっきらぼうに言う。何故か目の前の奈々はニコニコ顔になっていた。祐吾と目が合うと、えへへと照れたような笑いをする。
「何だよ?」
その反応の意味がわからず、祐吾は訝しがる。奈々はほんのり頬をピンクに染めながら言った。
「だって、嬉しいんだもん。この家に上がれた私は特別みたい」
「お前……」
それだけのことで機嫌がよくなるなんて単純すぎるだろう。だけど目の前の奈々はとんでもなく嬉しそうに笑う。