俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
奈々は大学を卒業しているが就活に失敗して、慌てて職を探し行き着いた先が派遣社員だっただけのこと。その後、転職しようと思えばいくらでもできたはずだし、実際に考えたこともあった。
でもそれをしなかったのは、ここでの仕事が好きになっていたし人間関係も悪くなかったからだ。毎回何の問題もなく契約更新もされる。だから、辞めるという気持ちは起きなかった。
けれど最近切に思っていることがある。
自分と祐吾は釣り合わないんじゃないかと。
一流大学を出てどんどん昇進していく祐吾。
給与額は聞いたことがないが、奈々とは比べ物にならないくらい貰っているのだろう。カード払いは当たり前だし、そもそもあのタワーマンションに住んでいるくらいだ。
かたや奈々はほとんど昇給なしの派遣社員。自分一人で細々と暮らしていくならなんとかなるが、将来を考えると不安でしかたがない。
だから、もしかしたら今が転職の時なのではないかと考えるようになっていた。
「奈々、明日は朝から来るか?」
「ごめんなさい。明日は午前中用事があるので、午後から行きます」
金曜日は決まって明日の予定を確認する。大抵祐吾のマンションへ奈々があしげく通っているわけだが、最近はちょっとつれない。毎回出勤するかのように朝から訪ねてくるところ、ここ何回かは午後から来ることが多かった。
デートらしいデートをしていないことを不満がっているのだろうか。
奈々にばかりこちらへ来させているのが不満だろうか。
倉瀬に思い当たる節はあるのだが、どれもピンとこなかった。
イライラしながら奈々を待つ。本を読んでも内容は全然頭に入ってこなかった。と同時に、どこまで奈々に依存しているんだとも思い倉瀬は頭を掻く。
倉瀬は自分でも自覚しているくらい、奈々にベタボレなのだ。