俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
神社の参道に向かって屋台がひしめいて並んでいる。多くの人で賑わって、流れに飲み込まれてしまいそうだ。
奈々と祐吾ははぐれないように手を繋いだ。初めて手を繋ぐわけではないのに、奈々はそれだけでほんのり頬をピンクに染める。
歩きながら、りんご飴は昔からあるねだとか、綿菓子はキャラクターの袋がほしいだけだよねとか、そんなたわいもない話で盛り上がる。特に何かを買わなくても、雰囲気だけでお祭りの賑やかしさや楽しさが感じられウキウキとした気分になってくる。
浴衣の女性の多いことが目につき、祐吾は奈々に問う。
「奈々は浴衣着ないのか?」
「もう何年も着てないから。祐吾さんは浴衣似合いそうだね」
祐吾の浴衣姿を想像しただけで、奈々はドキドキしてしまう。そっと見上げれば綺麗な横顔があって、そして視線が交わる。照れ隠しに笑うと微笑み返してくれる祐吾。それだけのことなのに、奈々は嬉しくてたまらなくなる。
祐吾と一緒に過ごす時間がこんなにも愛しくて大切で、そして大好きで。幸せで幸せで、奈々は心が満たされるようだった。
祭りを一通り楽しんだ後、二人は奈々の家に向かった。神社からはそれほど遠くはなく、祭りとはうって変わって静かな田んぼ道をゆっくり歩く。
向かう道すがら、先程からうっとおしいくらいに奈々が前情報を祐吾に伝えていた。
「あのね、うち、古くて汚いから驚かないでね。狭いし、畳だし。ソファとかないし。あと、お父さん頑固だし、変なこと言ったらごめんね」
祐吾としては別に何も気にならないのだが、あまりにもわーわー言ってくるので、「ああ、わかった」と適当に相槌を打っておく。
それでも奈々の心配は止まらず、祐吾は思わず苦笑いした。