俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
奈々の手料理は何度か食べたことがあったが、今日の夕飯はまた格別に美味しかった。
作り置きばかりでごめんなさいと言う奈々だったが、祐吾には何がごめんなさいだかわからないほど箸が進んだ。
金平ごぼうに蒟蒻の煮物。
ポテトサラダに揚げ出し豆腐。
京都のおばんざいかと思うほどいろいろな惣菜があった。
外食なんかより奈々の手料理の方が断然好きだ。奈々が祐吾のマンションへ泊まるようになってから、外食をすることが減った。奈々が作ってくれるからだ。ほとんど使っていなかった立派なシステムキッチンも、大分生活感が出てきて奈々仕様になってきている。
「まさか夕飯を家で食べるとは思ってなかったから、有り合わせばかりになっちゃった」
花火が上がるというので二人外に出て歩く道すがら、奈々が申し訳なさそうに言う。
「祐吾さんのお口に合ったかしら?それに、狭くて汚い家でごめんなさい。父が失礼なこと言わなかった?」
しきりに気にして聞いてくる。
何をそんなに心配するのだ。
奈々の心配性には呆れてしまう。
本当に世話のかかるやつだと、祐吾は溜め息をついた。
「奈々。お前、俺のこと誤解しているだろう?」
「誤解?」
祐吾の言葉にきょとんと首を傾げる奈々に、言い聞かせるように言う。
「どうせお前のことだから、俺が金持ちで庶民とは住む世界が違うとか思ってるだろう」
「……そこまでは思ってないけど、多少思ってマス」
ゴニョゴニョと小さい声になっていく奈々に、祐吾は「バカだな」と吐き捨てた。