俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい

「奈々、これも」

言われて体を離すと、小さな箱が渡される。綺麗にラッピングされたその箱と祐吾を交互に見ると、開けてみろと目で促された。細いリボンをシュルシュルとほどいて開けてみれば、箱の中からはキラキラと小さなダイヤモンドが散りばめられた指輪が入っていた。

「……祐吾さん、これ」

困って見上げると、祐吾はその指輪を手に取って奈々の左薬指にそっとはめた。細身でシンプルなデザインの指輪は、奈々の細い指によく似合っていてサイズもぴったりだ。

「お前、誕生日はちゃんと申告しろ。まさか四月だとは思わなくて大分過ぎただろうが」

「もしかしてこれ、誕生石……?」

四月の誕生石はダイヤモンドだ。四月生まれの奈々だが、あえて誕生日を祐吾に伝えたことはなかった。誕生日など祐吾は興味がないと思ったからだ。

「何で知ってるの?」

「俺を誰だと思ってる。会社の人事データベースにアクセスした」

「ええっ!直接聞いてくれたらいいのに」

「それじゃサプライズにならないだろう?」

よもや祐吾の口から"サプライズ"などという単語が出てこようとは奈々は驚きのあまり目をぱちくりさせる。祐吾のあたたかい優しさがじわじわと奈々の体を巡り、やがて奈々は目を潤ませながら微笑んだ。左手を大事そうに胸に押し当てる。

「奈々、少し寂しい思いをさせてしまう」

「……うん」

「その指輪はお守りだ。奈々は俺のものだからな。変な男にひっかかるなよ」

「……うん」

祐吾の言葉に返事をしていると奈々の目からは涙が溢れ出てきた。それは寂しさだけではない。こんなにも大好きな祐吾と離れるのが怖いのだ。

けれど嬉しい気持ちもある。奈々を想う祐吾の気持ちが大きくあたたかくて、それは奈々の心を喜びで満たしていく。

「祐吾さんありがとう。……私、試験頑張ります」

目の前にあること、まずはそれを頑張る。
勉強を見てくれた祐吾のためにも、自分の将来のためにも。

「俺が教えてやったんだ、完璧だろ」

悪戯っぽく笑う祐吾が頼もしくて愛しくて、奈々はまた泣きながら笑った。
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