俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
三月下旬、予定通り祐吾が帰国した。
奈々はまた祐吾のマンションで出迎える。
今回もたくさん惣菜を作った。祐吾が顔に似合わず和食好みなのが何だか可愛らしく思える。
「金平ごぼうあるよ」
奈々がと言うと、祐吾は嬉しそうに笑った。
一緒にご飯を食べて、たわいもない話をする。一時帰国から三ヶ月離れていたのが嘘のように、あっという間に元の時間に戻った。
「奈々、今日は泊まっていけよ」
「うん」
返事をしてハタと思い直す。泊まるということは、もしかしたら体を求められるかもしれない。
流産をしてから一ヶ月半。医師から生理は一ヶ月後くらいで再開すると聞いていた。だがまだ生理は来ていない。それはたぶん、精神的な部分がホルモンバランスに影響しているのだろうと奈々は感じていた。
それよりも、体を重ねることに恐怖のような怯えのような感情が頭をちらつく。
「祐吾さんごめんなさい。今日はやめとく……」
「?」
「えっと……生理中で……」
「そうか、じゃあ家でゆっくりしたほうがいいな。しんどいのに来てくれてありがとな」
咄嗟に嘘をついたのに祐吾は何の疑問も持たず受け入れる。それどころか生理中の奈々を気遣うような言葉までかけられ、奈々は胸がチクリと痛んだ。
帰る前に玄関先でキスをしてハグをする。
「奈々、ちょっと痩せたか?」
「そう?じゃあ夏に向けて準備オッケーだね」
「何だそれ」
「女の子は細いのに憧れるのです」
ふふふと笑う奈々に、祐吾は「ちゃんと食えよ」と頭をくしゃくしゃっと撫でた。