俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
◇
流産後、初めての生理がやっときた。
医師には通常通りの生理が始まるから心配しないようにと言われていた。だが普段の周期よりずいぶん遅れたせいか、酷い生理痛を伴った。仕方なしに痛み止めの薬を飲んで出勤する。
フラフラする体をごまかしながらなんとか午前中の業務を終え、昼休憩になった。食堂に向かうため朋子が奈々に声をかける。
「奈々、今日食堂?って、何か顔色悪くない?」
「うん、ちょっと生理痛が酷くて」
「大丈夫?お昼は?」
「食堂行くよ」
そう言って立ち上がったところ、急に目の前が真っ白になり目を開けていられなくなった。あっと思ったときにはその場に倒れるようにして座り込んでしまう。そのまま奈々は意識が朦朧としてくるのを感じた。
「ちょっと奈々、大丈夫!?」
朋子の声がかすかに聞こえた気がしたが応えることもできず、奈々の意識はぷっつりと途切れてしまった。
奈々が目を開けると、一面真っ白な壁だった。それが天井だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
横には心配そうに覗きこむ朋子の姿がある。
「……朋ちゃん?」
「奈々、よかった。大丈夫?」
「……うん。ここ……」
「会社の医務室だよ。それよりどう、体調は」
「あ、うん……」
奈々は瞬きをする。もう目の前の白さはなくなり普通に物が見えている。そして横になっている分、先程よりも体調は幾分かマシになっている気がした。
「貧血みたいだけど、産業医の先生が今日はもう帰りなさいって。動けそう?」
「……もう少し横になってていいかな?それより朋ちゃんごめんね。お昼休憩潰しちゃって」
「気にしないでよ。私、課長に報告して、それから奈々の荷物持ってくるね」
「うん、ありがとう」
奈々は泣きたくなる気持ちを抑えて目を閉じた。
まさか貧血で倒れるなんて。
ああ、何をやっているんだろう。
皆に迷惑をかけてしまった。
こんなことなら生理休暇を使えばよかった。
浮かぶのは後悔の念ばかりだ。
じわりじわりと滲む涙を袖で拭った。