俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
ふいにカーテンが開く音がして、奈々は朋子が戻ってきたと思って目を開けた。だが、そこには祐吾の姿があった。
「貧血だって?」
奈々の横たわるベッドに座り、覗き込みながら優しく髪を撫でる。
「……何でいるの?」
「水野さんが教えてくれた」
「朋ちゃんが?」
朋子は課長に報告してから祐吾の元を訪れていた。部署は違っても同じビル内にいることが幸いし、すぐに知らせることができる。朋子の代わりに奈々の荷物は祐吾が持ってきてくれていた。
「朝から体調悪かったのか?」
「ううん。そうじゃなくて、ちょっと生理痛が酷かっただけ……」
そう言って、はっと奈々は口元を押さえた。
先週祐吾に生理だから泊まらないと言ったが、あの日からもう六日は経っている。それなのに酷い生理痛とはおかしな話だ。個人差はあるが通常生理は一週間程度だ。生理に気遣いができる祐吾なら、それくらいの知識は持ち合わせているだろう。
恐る恐る祐吾を見ると、眉根を寄せて険しい顔をしている。
奈々はどんどん血の気が引いていった。
「奈々、どこか体の具合が悪いのか?」
祐吾は以前、”奈々を総合病院で見た”という智也の言葉を思い出して聞いた。ほんの軽い気持ちで聞いただけだったのに、奈々は今にも泣き出しそうな悲痛な顔をして固まった。
昼休憩が終わる鐘の音が、遠くで聞こえた。