俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
◇◇◇
奈々の体調とメンタルが落ち着いてから、改めて両家へ結婚の挨拶に行った。
奈々の父親はいつも通り温かく二人を迎え、
初めて奈々の弟も顔を出した。
「奈々さんと結婚させてください」
礼儀正しく頭を下げる祐吾に、奈々の父は涙を滲ませながら喜んだ。そんな父に、奈々の弟は冷やかして言う。
「父さん、祐吾さんがKURAコーポレーションの御曹司だって知ってる?」
「……えっ?!」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして腰を抜かすほど驚くので、奈々と祐吾は顔を見合わせて苦笑いだ。
「そ、そ、そ、そんな、偉い人とっ!」
「お父さん、落ち着いて」
「偉くないです、一般人ですから」
「ていうか、本当に知らなかったんだ?そっちの方が驚きだよ」
それぞれがそれぞれの想いで大騒ぎし、無事に西村家への挨拶は終わったのだった。
奈々は祐吾の両親に会うのは初めてだった。
父親は勤め先の社長なので社内報等で顔写真は見たことがある。凛々しい顔は仕事中の祐吾とそっくりだ。
祐吾さんはお父さん似なのね、と悠長なことを思っていたわけなのだが、とにかく今は緊張してガチガチに固まっている。
「いい加減、落ち着けって」
「無理だよ。契約社員の面接より緊張する」
笑う祐吾だったが、奈々は強ばるばかりだ。
だが、奈々の心配をよそに意外にも祐吾の両親はすんなりと奈々を受け入れた。
「あの祐吾がこんなに可愛いお嬢さんを!本当に祐吾で大丈夫かい?考え直すなら今だよ」
「まあ~、娘ができるなんて嬉しいわぁ」
「奈々さんのおかげで祐吾が丸くなったようだ。なあ、母さん」
「本当よねぇ、性格も体型も。うふふ」
祐吾の父も母も勝手なことを口々に言い、奈々は恐縮しきりだが祐吾は苦笑いするしかなかった。
「あ、あの、私、契約社員なんですが……」
将来の社長とも言われる祐吾の妻になろうとする自分が契約社員ということに、奈々は引け目を感じていた。祐吾は気にするなと何度も言ってくれたが、きちんと自分から話して祐吾の両親に認めてもらいたい。
そう思って話したのだが……。
「まあ~、立派に働いているのねぇ。奈々さん偉いわ!祐吾、見習いなさい」
「俺も働いてるし……、いや、なんでもない」
祐吾の母親はあっけらかんと笑い、奈々はまた恐縮するし祐吾もまた苦笑いで、すったもんだの倉瀬家への挨拶も滞りなく終わった。