妊娠前提マリアージュ~強面の海運王の身ごもり妻、赤ちゃんの誕生日が二人の離婚予定日～

岩倉のお爺ちゃんは近所の商店街で二年前まで金物屋を営んでいたが、後継者となる長男は大手電機メーカー勤務で、今は家族で日本を離れ、中国の上海に赴任中。
金物屋を継ぐ意思はなく、岩倉のお爺ちゃんは体調を崩したのを機に店を廃業した。
今は年金暮らしで、こうして『文栄堂』のどら焼きを買いに足蹴に通うのが毎日の楽しみらしい。

開店すると今日も飛ぶようにどら焼きが売れていった。

「あら、今日は美晴ちゃんが店に立ってるのね…看板娘の雪美ちゃんは居ないのね…」

久しぶりにどら焼きを買いに来た常連の高田さんが私に言った。

「お久しぶりです…高田さん…雪美は妊娠して今…悪阻で『槇村レディースクリニック』に入院してるんですよ…」

私と共に店を手伝うお母さんが高田さんの相手をした。

「おめでたなの…それはそれは・・・若旦那様はイケメンだし、雪美ちゃんも美人でどっちに似ても…いいわね…」

「はい…」