妊娠前提マリアージュ~強面の海運王の身ごもり妻、赤ちゃんの誕生日が二人の離婚予定日~
慌ただしい午前中は過ぎ、店番をパートの従業員に任せ、私と母は奥の事務室に引っ込んで、事務作業をこなす。

「美晴…雪美から頼まれた荷物…槇村に届けて貰えるかしら?」

「いいわよ…でも・・・後三十分は掛かりそうだから…この仕事が終わってからでいい?お母さん」
「いいわよ…じゃ雪美には美晴が行くコト…『LINE』しとくわね」
「うん」

お姉ちゃんは妊娠が判明して、喜びもつかの間、酷い悪阻で苦しみ、近くの産婦人科医院『槇村レディースクリニック』に入院していた。

事務室内に響く外線電話。
私が受話器を取ろうとしたら、お母さんが受話器を取った。

「『文栄堂』で御座います…」

「!?」

フラリと正史さんが現れた。

「正史さん…」
「美晴ちゃん…春の練り切りの試作品出来たんだけど…試食して貰っていいかな?」

「あ、いいですけど…」

正史さんは私のデスクの端にそっと試作品の練り切りを置いた。
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