王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
「それもありますが、根本は違うでしょう。シルディーヌさんは、鍛錬場での出来事を覚えておられますか?」
鍛錬場で起こったこと?
シルディーヌはアルフレッドの早朝練習を見に行ったのだ。新入団員の訓練をする姿はとても素敵だったし、噂に聞く鬼神の騎士ぶりを目の当たりにできた。
だが、その後の出来事のほうが鮮明に残っているから、フリードの言わんとするところがよく分からない。
「あのときのアルフは新入団員たちを、すぐに倒してしまったわ。そのことかしら?」
「はい。そうです。あれは、一瞬で勝負を決する本気のひと振りなんです。団長といえども、新人相手に本気にならざるを得なかったのでしょう」
フリードは訳知り顔で腕を組み、「強大な、愛ですよ」と呟いて、うんうんと頷いている。
シルディーヌは常に『強大な愛情』をじゃぶじゃぶ注がれているらしいのだ。迷惑なこともあるが、助けられていることもある。
「団長が食堂への立ち入りを禁じたのは、〝その必要があるから〟なのです。シルディーヌさんのためにならないことは、決してなさいませんよ」
そう言われれば、そうかもしれない。