王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 今の悩みを打ち明けるべきだろうか。なにを食べたら、そんなにふっくらした胸になるのか、と……尋ねてみたいがどうにも恥ずかしい。

 そんなことをもんもんと考えながら、ポトフをぱくっと口に入れる。

「でも、シルディーヌ。ほんとに、とても綺麗になったわよねぇ」

 キャンディがため息交じりに言うから、シルディーヌは呑み込みかけたスープでむせそうになった。

「きっ、綺麗になったなんて、そんなことないわ」

 ぶんぶんと手を振って否定すると、キャンデイが首をかしげる。

「やだわ、シルディーヌったら。綺麗になった自覚がないの?」

 自慢じゃないが、自覚なんてスープに浮かぶパセリほどもない。

「ないわ。鏡を見ても、そこにあるのはいつもの顔とスタイルだもの」

「そんなことないわよ! 愛されると女性は変わるっていうもの。肌の艶とか、瞳の煌めきとか、王宮に来たときと、明らかに違うわ!」

 キャンディが力説をし、ペペロネがうんうんと頷いている。

「しかもお相手が黒龍の騎士団長でしょう。鬼神の団長の愛は特別に強いもの。美容になる愛のエッセンスも普通じゃないのよ。とても濃いと思うわ」

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