王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
「ね、シルディーヌ。実際はどうなの? 物語の貴公子さまみたいに、夢のような甘い台詞を言ってくれるのかしら?」
期待に満ちてキラキラする瞳が集中する。だから、なんとか甘いシーンを思い出そうとしてみるシルディーヌだけれど……。
『愛してる』と言われてキスをされたことはあるが、ペペロネたちの期待する甘い台詞とは違う気がする。
彼女たちは『きみは花のように可憐で美しい』とか『ぼくの愛情は海よりも深くて、空よりも大きいんだ!』とか、『きみのためなら、星の欠片も集められる』などだろう。
そんな台詞を鬼神の団長が言うのか……とても想像できない。
あとは、あのときもらった嬉しい言葉だけれど……。
思い出すとどうにも胸がときめいてしまうが、それも夢のように甘い台詞ではない。アルフレッドらしいものだった。
がっかりさせてしまうけれど、事実だから仕方がない。
現実はいつもワイバーンなのだ。
「シルディーヌ? 思いにふけらないで、教えてほしいわ」
「あ、甘いことは、なにもないわ。いつも怖い顔でイジワルを言うもの。いつもずっと、見た通り、そのままの雰囲気なの」