王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
あたふたと言うと、ペペロネたちはどっと笑った。
「やだわ、シルディーヌったら。真っ赤なお顔でそんなこと言っても、とても信じられないわよ」
「そのイジワルな言葉が、甘い台詞なのよね!」
「ふたりだけの秘密なんでしょ? 分かるわ! だって、鬼神のイメージが崩れてしまうものね?」
「そうよね。騎士団長の威厳を損なったら、いけないものね! もう尋ねないわ。おノロケをごちそうさま!」
「え、ノロケなんて、ひと言も……」
「そんなことないわよ!」
何故かきゃあきゃあと盛り上がってしまい、シルディーヌは置いてきぼりにされた気分になった。
「でも、今は不在なのよね。団長の睨みが利かないから、王宮に入ろうとする不審者が多いって、警備隊が戦々恐々としてるらしいわ」
キャンディが真剣な顔で言うと、ペペロネが眉をひそめた。
「まあ、ほんとうなの? 怖いわ」
「王宮内で怪しい人を見かけたら、警備に伝えるように言われたわ」
「その点、シルディーヌは安全よね。お勤め先が黒龍殿だもの。不審者も近づけないわよ」
「ええ、でも油断は大敵よね……」