王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-

 シルディーヌは人さらい事件を思い出して、身震いした。すぐに助けられたから良かったものの、そうでなければどこに売り飛ばされていたか分からない。

「マハルーン王国に訪問されている王太子殿下の護衛されてるのよね。団長は、いつお戻りになるのかしら?」

「帰国は五日後だって、副団長のフリードさまが仰っていたわ。それまではフリードさまがにらみを利かせていらっしゃるから、きっと大きな問題は起きないわよ」

 そう言うペペロネの頬がほんのりピンクに染まる。それをキャンディが目ざとく見つけた。

「あら、ペペロネは副団長にお会いになったの? よかったじゃない!」

「ええ、そうなの。夕方に訪ねていらして……少しお話したわ」

 フリードはお菓子のお礼で訪ねたのだろうか。おやつを我慢した甲斐があると、シルディーヌはテーブルの下で拳を握り、密かに自分を褒めた。

「ああ、ほんとうに、ふたりがうらやましいわ」

 キャンディがため息交じりに零し、ペペロネが慌てて首を振る。

「シルディーヌはともかく、私はまだ片思いなのよ?」

「それでもいいじゃない。ターゲットが明確なんだもの」

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