王宮侍女シルディーヌの受難2ー短篇-
フリードもアクトラスも、『あんなデレた表情をするのは、シルディーヌさんと一緒にいるときだけ』と口をそろえるが、いつも同じ顔に思えてならない。
シルディーヌはお茶を飲むアルフレッドの顔を思い浮かべた。
そう言われてみれば彼のムスッと曲がった唇が、ほんの少しだけ、笑みの形に変化している気がしなくもない。
そもそもアルフレッドは笑うことが少ないのだ。喧嘩の原因のひとつにもなった、あの時のように爽やかな笑顔は滅多に見られない。とても貴重なものだ。
もっとじっくり鑑賞したかったが、あのときはそれどころではなかった。
しかしあの笑顔を思い出せば、逞しい胸板が付属してしまうのが困りもので……。
シルディーヌは頬を真っ赤に染め、慌てて両手で隠した。
「シルディーヌさん? どうかされましたか?」
「な、なんでもないの。気にしないで」
「それならいいですが……。シルディーヌさんのことを気にかけるよう命じられているのです。体調不良などありましたら、すぐに仰ってください」
「ええ、私は元気いっぱいだから、大丈夫よ!」
どちらかといえば、フリードのほうが体調不良っぽいのだ。