性に適う君と僕
なんか耳が寂しいと思ったら、音楽聴いてなかった。
ふと思い出してリュックの外ポケットに今朝雑に詰め込んだワイヤレスイヤホンを取り出す。
───そんなときのこと。
「落ちましたけど」
耳に心地の良い声だった。
ぱっと振り返ると、モデル化と疑うほどの美形がそこにはいて、手には私のパスケースが握られていた。
リュックの外ポケットはついつい物をいれがちになってしまっていて、パスケースもそこに入れていたので、イヤホンを取り出した時に落ちてしまったみたいだ。
「あ、ごめんなさい」
「クルルギハルネ…」
「はい。私です」
ぺこりと頭を下げてお礼を言う。名前は、ICカードに表記されていたものを読み上げられただけだった。
ICカードって結構個人情報詰まってるし、失くしたら色々めんどくさそうだなーと、拾ってくれた美形さんの手からそれを受け取りながらそんなことを思う。
指が長くて、綺麗だった。