最強総長に、甘く激しく溺愛されて。 - RED KINGDOM -
目頭が熱くなる。
恐怖が体中を支配する中、にじむ涙に気づいてくれる人はいない。
圧倒的な力の差に、おとなしく身を差し出すしかないと、希望を手放した―次の瞬間。
鳴り響いたのは車のクラクション。
「チッ。うるせえな」
いくら通行の邪魔になろうと、彼らに退く気はさらさらないらしい。
車は苛立ったのか、連続で音を鳴らし続ける。
「おい、あの車どうにかしろ」
「えー、んなこと言ったってどうすりゃ」
「フロントでも割ってやれよ」
けらけらと笑う声に、この人たちには常識なんて存在しないんだと改めて感じた。
「うをっ。見ろよ、後ろの席から誰か降りてきたぞ」
「ひゅ~度胸あるう! 命知らずの馬鹿は誰か、……」
不自然に途切れた言葉。
静寂ののち、周りが息を呑む気配がした。