最強総長に、甘く激しく溺愛されて。 - RED KINGDOM -

目頭が熱くなる。

恐怖が体中を支配する中、にじむ涙に気づいてくれる人はいない。



圧倒的な力の差に、おとなしく身を差し出すしかないと、希望を手放した―次の瞬間。

鳴り響いたのは車のクラクション。



「チッ。うるせえな」


いくら通行の邪魔になろうと、彼らに退く気はさらさらないらしい。
車は苛立ったのか、連続で音を鳴らし続ける。



「おい、あの車どうにかしろ」

「えー、んなこと言ったってどうすりゃ」

「フロントでも割ってやれよ」



けらけらと笑う声に、この人たちには常識なんて存在しないんだと改めて感じた。




「うをっ。見ろよ、後ろの席から誰か降りてきたぞ」

「ひゅ~度胸あるう! 命知らずの馬鹿は誰か、……」



不自然に途切れた言葉。

静寂ののち、周りが息を呑む気配がした。
< 7 / 301 >

この作品をシェア

pagetop