最強総長に、甘く激しく溺愛されて。 - RED KINGDOM -
背徳と果実
広い室内で自分の心臓の音だけがバクバクと響く。
返事を待つ時間が永遠にも思える。
下の名前を告げる勇気はまだなかった。
どうせ覚えられてないことを頭では覚悟できてるのに、実際に本人の反応を見るのは怖い。
へえ、と一言だけ。
本田っていう苗字にピンときた様子もなさそう。
「早く入ってこい」
「あ、お、お借りします……」
まあ本田って珍しくもないし、5年も経てば顔だって変わるし。
「あ。そういえば寮ってもう大丈夫なんですか」
怜悧くんに気を取られてすぎて、あの一大事をすっかり忘れていた。
そうだよ一大事。
私の部屋燃えたじゃん!
「部屋の一部が燃えただけだから、他の部屋は普通に使えてるらしいな。ボヤで済んだって、三好から連絡があった」
「おお、それは、よかったです……」
学校のみんなに被害が及ばなかったという点は、本当によかった。
でも、ピンポイントで自分の部屋だけ燃えたなんて
あまりに運が悪くない……?