大和の風を感じて3~泡沫の恋衣~【大和3部作シリーズ第3弾 】
そんな忍坂姫の話を横で聞いていた阿佐津姫も、とても共感した感じで聞いていた。
「私もお母様が亡くなった時、お父様は私のことをとても心配していた。私はお母様の実家の吉備とは縁が薄く、とても頼れる様子ではなかったそう」
阿佐津姫は少し悲しそうな表情をしながら話した。あの強大な豪族吉備の血を引いていると言っても、彼女には何の繋がりも持ち合わせていない。
「そこでお父様は、物部筋の伊莒弗のお祖父様にお願いされたみたい。自分にもしものことがあったら、どうか娘を助けてやって欲しいと……」
阿佐津姫の話では、彼女の母親は物部伊莒弗の娘であった。なので唯一頼れたのが物部筋だったのだ。
「あの時はお母様が亡くなったこともあって、お父様も相当必死だったのでしょうね」
阿佐津姫はそう言うと少し涙目になる。
彼女は10代の時にたて続けに両親を亡くしている。それは当時の彼女にとっても酷く悲しい出来事だったはずだ。
それを聞いた大泊瀬皇子は、阿佐津姫のいいたいことを理解し、静かに口を開いていった。
「もちろん、俺もそう簡単に命を粗末にするつもりはない」
大泊瀬皇子は阿佐津姫の話しがまるで自分のことのように感じられた。韓媛が自身の父親を失った時に自分に見せた表情は、一生忘れることはできないだろう。
大泊瀬皇子がそういうと、部屋の中は一瞬とても重たい空気に包まれた。
すると忍坂姫は、その空気を壊すかのようにしていった。
「はい、この話はもうここまでにしましょう!大泊瀬、あなたはとにかく韓媛を大事にしなさい。要はそれがいいたかったの」
忍坂姫はわざと明るくして2人にそういった。もう亡くなってしまった人達のことを悔やんでも仕方ない。彼女はきっとそういいたかったのだろう。
そして忍坂姫は急に話しを変えるようにして、別の話しを始めることにした。
「ねぇ、最近良くないことばかり続いていたことだし、少し気分転換してみない?」
「え、気分転換ですか?」
阿佐津姫は忍坂姫にそういわれて、少し不思議そうな顔をする。
「そう、私は子供の頃ずっと息長に住んでいたのだけど、久々に息長に帰ってみようかと思ってね。
それに近くでは狩りも出来るから、大泊瀬、あなたは誰かを誘ってそっちに行ったら良いわ」
それを聞いて大泊瀬皇子は思った。どうやら忍坂姫は、自分も息長に同行させようと考えているようだ。
「あら、叔母様。それは楽しそうですね。私は息長には行ったことがないので、私も是非行ってみたいわ……あ、それなら大泊瀬、あなたは韓媛も誘ってみたらどう?」
「はぁ!?」
大泊瀬皇子は思わず、叫んでいった。
「私は彼女とは会ったことがないから一度見てみたいわ。あなたがここまでのめり込んだ相手なのだから」
阿佐津姫はそういって急にニヤニヤし出した。どうやら彼女は韓媛に興味があるようだ。
(どうして、韓媛をこんなことのために誘わないといけないんだ……)
大泊瀬皇子は明らかに嫌そうな表情をして見せた。
「私もお母様が亡くなった時、お父様は私のことをとても心配していた。私はお母様の実家の吉備とは縁が薄く、とても頼れる様子ではなかったそう」
阿佐津姫は少し悲しそうな表情をしながら話した。あの強大な豪族吉備の血を引いていると言っても、彼女には何の繋がりも持ち合わせていない。
「そこでお父様は、物部筋の伊莒弗のお祖父様にお願いされたみたい。自分にもしものことがあったら、どうか娘を助けてやって欲しいと……」
阿佐津姫の話では、彼女の母親は物部伊莒弗の娘であった。なので唯一頼れたのが物部筋だったのだ。
「あの時はお母様が亡くなったこともあって、お父様も相当必死だったのでしょうね」
阿佐津姫はそう言うと少し涙目になる。
彼女は10代の時にたて続けに両親を亡くしている。それは当時の彼女にとっても酷く悲しい出来事だったはずだ。
それを聞いた大泊瀬皇子は、阿佐津姫のいいたいことを理解し、静かに口を開いていった。
「もちろん、俺もそう簡単に命を粗末にするつもりはない」
大泊瀬皇子は阿佐津姫の話しがまるで自分のことのように感じられた。韓媛が自身の父親を失った時に自分に見せた表情は、一生忘れることはできないだろう。
大泊瀬皇子がそういうと、部屋の中は一瞬とても重たい空気に包まれた。
すると忍坂姫は、その空気を壊すかのようにしていった。
「はい、この話はもうここまでにしましょう!大泊瀬、あなたはとにかく韓媛を大事にしなさい。要はそれがいいたかったの」
忍坂姫はわざと明るくして2人にそういった。もう亡くなってしまった人達のことを悔やんでも仕方ない。彼女はきっとそういいたかったのだろう。
そして忍坂姫は急に話しを変えるようにして、別の話しを始めることにした。
「ねぇ、最近良くないことばかり続いていたことだし、少し気分転換してみない?」
「え、気分転換ですか?」
阿佐津姫は忍坂姫にそういわれて、少し不思議そうな顔をする。
「そう、私は子供の頃ずっと息長に住んでいたのだけど、久々に息長に帰ってみようかと思ってね。
それに近くでは狩りも出来るから、大泊瀬、あなたは誰かを誘ってそっちに行ったら良いわ」
それを聞いて大泊瀬皇子は思った。どうやら忍坂姫は、自分も息長に同行させようと考えているようだ。
「あら、叔母様。それは楽しそうですね。私は息長には行ったことがないので、私も是非行ってみたいわ……あ、それなら大泊瀬、あなたは韓媛も誘ってみたらどう?」
「はぁ!?」
大泊瀬皇子は思わず、叫んでいった。
「私は彼女とは会ったことがないから一度見てみたいわ。あなたがここまでのめり込んだ相手なのだから」
阿佐津姫はそういって急にニヤニヤし出した。どうやら彼女は韓媛に興味があるようだ。
(どうして、韓媛をこんなことのために誘わないといけないんだ……)
大泊瀬皇子は明らかに嫌そうな表情をして見せた。