大和の風を感じて3~泡沫の恋衣~【大和3部作シリーズ第3弾 】
市辺皇子の決心
翌日大泊瀬皇子と市辺皇子は、忍坂姫達に見送られながら馬に乗って狩りに出発した。
その道中、市辺皇子は自分の前を走る大泊瀬皇子を見ながら、今回の狩りに出掛けた日のことを思い返す。
「市辺皇子、どうぞお気をつけて行ってきて下さいね」
そう答えたのは彼の妃である荑媛だった。
彼女は葛城蟻臣の娘で、気立てが良くとても心の優しい女性である。
彼女との婚姻は周りからの勧めで決まったことではあったが、市辺皇子と荑媛の仲は思いのほか上手くいっていた。
阿佐津姫との婚姻はなくなってしまったが、荑媛を妃に迎え入れたことにはそれなりに満足している。
そして市辺皇子はもしものことを考えて彼女にある話をする。
「荑媛、今は次の大王がまだ決まっていない状態だ。なのでもし俺に万が一のことがあれば、億計と弘計を遠くに逃げさせるんだ。今の大泊瀬は正直何をするか分からない」
荑媛は突然皇子にそんなことをいわれ、とても驚いた表情を見せる。
これではまるで、彼がこれから殺されてしまうといっているようなものだ。
「い、市辺皇子。何て話をされるのですか。そんな縁起でもないことを……」
荑媛は思わず身震いしながら彼に言った。
彼女も大泊瀬皇子がここ最近自身の兄弟を殺し、彼女の同族であった葛城円を死に追いやったことは知っている。
そのため、これが冗談でいっている訳でないことを、彼女も十分に理解していた。
なので荑媛は、彼には今回の狩りにはできれば行って欲しくないと思っている。
「市辺皇子、一体何をお考えなのですか?」
荑媛は思わず彼にそういった。
だが市辺皇子はそれに対してのはっきりとした答えを話す様子はない。
「別に、もしものことがあった時のために、伝えておいた方が良いと思っただけだ。それに今回の狩りは忍坂姫の提案だ。別に心配することでもない」
荑媛も彼にそういわれたので、少し不安を覚えはしたものの、彼を狩りに送り出すことにした。
(今回は人数も少なめで、大泊瀬も恐らく油断しているだろう。あいつを殺すなら今回が良い)
市辺皇子は今回の狩りを利用して、大泊瀬皇子を殺すことにしていた。
これは彼も、自身の命をかけてのことになる。なので最悪の事態にそなえて荑媛に息子達のことを伝えたのだ。
(大泊瀬と剣でやり合うことにでもなれば、強さは恐らく五分五分になる。だがそれも覚悟の上だ。たとえ相討ちになったとしても、必ずあいつを俺が倒してみせる)
市辺皇子はそんなことを考えながら、前の大泊瀬皇子を見ていた。
その道中、市辺皇子は自分の前を走る大泊瀬皇子を見ながら、今回の狩りに出掛けた日のことを思い返す。
「市辺皇子、どうぞお気をつけて行ってきて下さいね」
そう答えたのは彼の妃である荑媛だった。
彼女は葛城蟻臣の娘で、気立てが良くとても心の優しい女性である。
彼女との婚姻は周りからの勧めで決まったことではあったが、市辺皇子と荑媛の仲は思いのほか上手くいっていた。
阿佐津姫との婚姻はなくなってしまったが、荑媛を妃に迎え入れたことにはそれなりに満足している。
そして市辺皇子はもしものことを考えて彼女にある話をする。
「荑媛、今は次の大王がまだ決まっていない状態だ。なのでもし俺に万が一のことがあれば、億計と弘計を遠くに逃げさせるんだ。今の大泊瀬は正直何をするか分からない」
荑媛は突然皇子にそんなことをいわれ、とても驚いた表情を見せる。
これではまるで、彼がこれから殺されてしまうといっているようなものだ。
「い、市辺皇子。何て話をされるのですか。そんな縁起でもないことを……」
荑媛は思わず身震いしながら彼に言った。
彼女も大泊瀬皇子がここ最近自身の兄弟を殺し、彼女の同族であった葛城円を死に追いやったことは知っている。
そのため、これが冗談でいっている訳でないことを、彼女も十分に理解していた。
なので荑媛は、彼には今回の狩りにはできれば行って欲しくないと思っている。
「市辺皇子、一体何をお考えなのですか?」
荑媛は思わず彼にそういった。
だが市辺皇子はそれに対してのはっきりとした答えを話す様子はない。
「別に、もしものことがあった時のために、伝えておいた方が良いと思っただけだ。それに今回の狩りは忍坂姫の提案だ。別に心配することでもない」
荑媛も彼にそういわれたので、少し不安を覚えはしたものの、彼を狩りに送り出すことにした。
(今回は人数も少なめで、大泊瀬も恐らく油断しているだろう。あいつを殺すなら今回が良い)
市辺皇子は今回の狩りを利用して、大泊瀬皇子を殺すことにしていた。
これは彼も、自身の命をかけてのことになる。なので最悪の事態にそなえて荑媛に息子達のことを伝えたのだ。
(大泊瀬と剣でやり合うことにでもなれば、強さは恐らく五分五分になる。だがそれも覚悟の上だ。たとえ相討ちになったとしても、必ずあいつを俺が倒してみせる)
市辺皇子はそんなことを考えながら、前の大泊瀬皇子を見ていた。