大和の風を感じて3~泡沫の恋衣~【大和3部作シリーズ第3弾 】
「か、韓媛……気が付いたのか」
大泊瀬皇子は思わず目から涙を流す。
彼が人前で涙を流す所なんて、彼女も今まで一度も見た事がなかった。
それから韓媛は少し時間をおき、皇子に支えられながら、ゆっくりと上半身を起こす。
韓媛は改めて大泊瀬皇子を見た。彼の顔は彼女の直ぐそばにあり、そして彼の目には、先程泣いていた涙がまだ頬に残っている。
そんな彼を見た彼女が「もしかして、大泊瀬皇子が助けてくれ……」と言った瞬間、彼は思いっきり彼女を抱きしめた。
「韓媛、お前が無事で良かった!!」
韓媛もそんな皇子を目にして、さすがに少し動揺する。
そして彼から自身を離そうとするも、彼は全く彼女を離そうとしなかった。
皇子は彼女の後頭部に手を当てると、彼女のこめかみ辺りにそっと自分の口を付ける。
そして「韓媛、韓媛……」と何度も彼女の名前を囁いた。
(大泊瀬皇子の体が、震えている?)
それからしばらくして、彼がやっと彼女から体を少し離した。
だがそれでも彼はまだ彼女から完全には離れてはいなかった。
「もう本当に駄目かと思った……」
どうやら大泊瀬皇子は、韓媛がこのまま死んでしまうと本気で思ったようだ。
それを聞いた韓媛も、やはり自分は相当危なかったのだなと理解する。
(川の中で意識が遠のく瞬間に聞いた声は、大泊瀬皇子だったのね)
「大泊瀬皇子、本当にごめんなさい。あなたにこんな迷惑をかけてしまって」
韓媛は思わずぼろぼろと涙を流した。彼にどうお詫びをしたら良いのか分からない。
「もう大丈夫だ、お前は心配するな」
そう言って、大泊瀬皇子はまた再び彼女を抱き締めた。
韓媛は皇子に強く抱きしめられているため、彼の心臓の音が凄く伝わってくる。彼の鼓動はかなり早くなっていた。
彼には、これまでに何度か抱きしめられた事はあったが、今回は明らかに今までとは少し感じが違う。
何故か強く彼女を自身に抱き寄せ、そして彼女の耳元で少し荒い息の音が聞こえて来るかと思えば、彼女の耳や頬に優しく口付けてくる。
(皇子、一体どうしてこんな事を……)
でも何故だか、韓媛は本気で彼を拒む事も出来ずにいた。彼の口付けがとても優しくて、このまま流されてしまいたいとさえ、彼女は思ってしまった。
だがずっとこのままでいる訳にもいかず、その後やっとの思いで、彼女は彼から離れる事が出来た。
きっと韓媛が死にかけて、彼もかなり動揺したのだろう。また彼女自身も彼には本当に感謝してるので、ひとまず今は余り触れないでおく事にした。
そして気が付くと、辺りはだんだんと薄暗くなってきていた。そして2人とも水に浸かっていたため、服はすっかり濡れている。
「とりあえず、このままだと2人とも体を冷やしてしまう。それにこれ以上暗くなると、下手に動くのも危険だ。今日はどこか安全な場所で夜を明かすしかない」
大泊瀬皇子もだいぶ冷静さが戻って来たようで、周りの確認をし始めた。
大泊瀬皇子は思わず目から涙を流す。
彼が人前で涙を流す所なんて、彼女も今まで一度も見た事がなかった。
それから韓媛は少し時間をおき、皇子に支えられながら、ゆっくりと上半身を起こす。
韓媛は改めて大泊瀬皇子を見た。彼の顔は彼女の直ぐそばにあり、そして彼の目には、先程泣いていた涙がまだ頬に残っている。
そんな彼を見た彼女が「もしかして、大泊瀬皇子が助けてくれ……」と言った瞬間、彼は思いっきり彼女を抱きしめた。
「韓媛、お前が無事で良かった!!」
韓媛もそんな皇子を目にして、さすがに少し動揺する。
そして彼から自身を離そうとするも、彼は全く彼女を離そうとしなかった。
皇子は彼女の後頭部に手を当てると、彼女のこめかみ辺りにそっと自分の口を付ける。
そして「韓媛、韓媛……」と何度も彼女の名前を囁いた。
(大泊瀬皇子の体が、震えている?)
それからしばらくして、彼がやっと彼女から体を少し離した。
だがそれでも彼はまだ彼女から完全には離れてはいなかった。
「もう本当に駄目かと思った……」
どうやら大泊瀬皇子は、韓媛がこのまま死んでしまうと本気で思ったようだ。
それを聞いた韓媛も、やはり自分は相当危なかったのだなと理解する。
(川の中で意識が遠のく瞬間に聞いた声は、大泊瀬皇子だったのね)
「大泊瀬皇子、本当にごめんなさい。あなたにこんな迷惑をかけてしまって」
韓媛は思わずぼろぼろと涙を流した。彼にどうお詫びをしたら良いのか分からない。
「もう大丈夫だ、お前は心配するな」
そう言って、大泊瀬皇子はまた再び彼女を抱き締めた。
韓媛は皇子に強く抱きしめられているため、彼の心臓の音が凄く伝わってくる。彼の鼓動はかなり早くなっていた。
彼には、これまでに何度か抱きしめられた事はあったが、今回は明らかに今までとは少し感じが違う。
何故か強く彼女を自身に抱き寄せ、そして彼女の耳元で少し荒い息の音が聞こえて来るかと思えば、彼女の耳や頬に優しく口付けてくる。
(皇子、一体どうしてこんな事を……)
でも何故だか、韓媛は本気で彼を拒む事も出来ずにいた。彼の口付けがとても優しくて、このまま流されてしまいたいとさえ、彼女は思ってしまった。
だがずっとこのままでいる訳にもいかず、その後やっとの思いで、彼女は彼から離れる事が出来た。
きっと韓媛が死にかけて、彼もかなり動揺したのだろう。また彼女自身も彼には本当に感謝してるので、ひとまず今は余り触れないでおく事にした。
そして気が付くと、辺りはだんだんと薄暗くなってきていた。そして2人とも水に浸かっていたため、服はすっかり濡れている。
「とりあえず、このままだと2人とも体を冷やしてしまう。それにこれ以上暗くなると、下手に動くのも危険だ。今日はどこか安全な場所で夜を明かすしかない」
大泊瀬皇子もだいぶ冷静さが戻って来たようで、周りの確認をし始めた。