大和の風を感じて3~泡沫の恋衣~【大和3部作シリーズ第3弾 】
「では、お父様。私行きますね」
これが父と娘の最後の別れの挨拶かと思うと、どうもあっさりし過ぎているなと彼女は思う。
「あぁ、頑張るんだぞ。それとお前に渡したあの短剣だが、何となくあの剣がお前を守ってくれるような気がする」
それを聞いて韓媛は思った。
今回あの剣は何の反応もなかったので一瞬困ったが、これは父親との最後の会話である。ここは父のいうことに従おう。
「分かりました、お父様。私もお父様から頂いた短剣を信じてみます」
韓媛はそういうと軽く彼に頭を下げて、その場を走り去って行った。
(お父様、さようなら……)
葛城円はそんな娘の姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。
そして娘がいなくなると、葛城円はふと独り言のようにしていった。
「紫津媛、私達の娘は本当に聡明で優しいな娘になった。あの子だけは何としても生き抜いて幸せになって欲しい……」
そしてその後、彼は眉輪のいる部屋の中に戻っていく。
彼が部屋の中に入ると、中では眉輪が座って彼を待っていた。
「あなたの娘は行かれたのですね」
眉輪は特に怯えることもなく静かにそういった。円はそんな彼を見てとても7歳の子供には見えないと思った。
この年で大人を殺してしまうとは、何とも恐ろしい子供である。
そしてこの子供が何とも不運の運命を辿ることになり、とても哀れに思えた。
そういう意味では、自分と一緒にこのまま人生を終らせるのも良いのかもしれない。
「眉輪様、まもなくこの部屋も火でおおわれます」
「はい、分かってます。であれば僕のことをこのまま殺してくれませんか。最後にこんな僕を庇ってくれたあなたに殺されるなら本望です」
眉輪はとても穏やかな表情でそういった。その笑顔だけは年相応の子供に見えると円は思う。
「分かりました。眉輪様、私もその後直ぐにあとを追いますので……」
そういって彼は自身の剣を引き抜き、彼に剣の先を向ける。
(きっとこれで私もこの幼い皇子も救われるだろう)
そしてその後この部屋は燃え盛る炎に覆われていった。
これが父と娘の最後の別れの挨拶かと思うと、どうもあっさりし過ぎているなと彼女は思う。
「あぁ、頑張るんだぞ。それとお前に渡したあの短剣だが、何となくあの剣がお前を守ってくれるような気がする」
それを聞いて韓媛は思った。
今回あの剣は何の反応もなかったので一瞬困ったが、これは父親との最後の会話である。ここは父のいうことに従おう。
「分かりました、お父様。私もお父様から頂いた短剣を信じてみます」
韓媛はそういうと軽く彼に頭を下げて、その場を走り去って行った。
(お父様、さようなら……)
葛城円はそんな娘の姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。
そして娘がいなくなると、葛城円はふと独り言のようにしていった。
「紫津媛、私達の娘は本当に聡明で優しいな娘になった。あの子だけは何としても生き抜いて幸せになって欲しい……」
そしてその後、彼は眉輪のいる部屋の中に戻っていく。
彼が部屋の中に入ると、中では眉輪が座って彼を待っていた。
「あなたの娘は行かれたのですね」
眉輪は特に怯えることもなく静かにそういった。円はそんな彼を見てとても7歳の子供には見えないと思った。
この年で大人を殺してしまうとは、何とも恐ろしい子供である。
そしてこの子供が何とも不運の運命を辿ることになり、とても哀れに思えた。
そういう意味では、自分と一緒にこのまま人生を終らせるのも良いのかもしれない。
「眉輪様、まもなくこの部屋も火でおおわれます」
「はい、分かってます。であれば僕のことをこのまま殺してくれませんか。最後にこんな僕を庇ってくれたあなたに殺されるなら本望です」
眉輪はとても穏やかな表情でそういった。その笑顔だけは年相応の子供に見えると円は思う。
「分かりました。眉輪様、私もその後直ぐにあとを追いますので……」
そういって彼は自身の剣を引き抜き、彼に剣の先を向ける。
(きっとこれで私もこの幼い皇子も救われるだろう)
そしてその後この部屋は燃え盛る炎に覆われていった。