瞬きもせずに・・
翌日三枝先輩の怒号とスパルタ指導のもと体力と精神力を消耗した後、桜井先輩の元に遠藤君と私で向かった。(当然私は女子代表であって桜井先輩に近寄りたいとは・・思っていますよ当然!)
あれ?桜井先輩これから自主練?
先輩はラケットにボールケースを持ち部室から出て来た。
「あっ!桜井先輩」
遠藤君が駆け寄る。
「どうした?」
桜井先輩に遠藤君が話し始めた。
「少し時間いいでしょうか」
「手短目にね」
「はい・・実は・・」
遠藤君は私達が話し合った内容をかみ砕きながら上手く伝えてくれた。
「成る程。じぁ1人でも僕から逃げ切れれば皆の勝ちと認めてほしいと言う事で良いのかな?」
そのうなのだ、私達が考えた作戦は、長く伸びた列を作り、後続が先輩を妨害しながら先頭を逃がし走りきる作戦だ。それには、1人勝ちの条件が必要だった。その為の相談なのだ。
先輩は少し考えた後口にした。
「因みにこの提案は誰が決めたのかな?」
「皆で決めました。」
「そうか皆でね」
「いいよ」
「ありがとうございます」
やった!私と遠藤君は一斉にお辞儀をした。
「但し。チャンスは1回だけ!このチャンスを逃せば今年いっぱいはマラソンと素振りだけにするからね」
先輩はあのニンマリ顔をして答える。
「じゃあ明日でいいのかな?」
先輩の逆提案に動揺する
わーマジか!
横の遠藤君を見ると同じく動揺して即答出来ないでいる。
当然だ!このハイリスクなハイリターンは相談しないと返事出来ない。
「・・・」
「ん?どうした?適当に考えちゃった?」
「・・・」
「僕に勝つ気はない提案?」
「・・・」
「ただ今の練習が嫌だから逃げたい気持ちだけで皆で決めたの?」
なんか変な感じ・・モヤモヤする。
いつの間にかシャツを握りしめていた。
先輩の顔を見つめる。
「桜井先輩!明日!お願いします。」
桜井先輩はじっと私を真剣な眼差しで見つめる。私も負けない様に見つめ返す。
「よし!じゃあ明日。頑張ろう。」
すると先輩はいつものニンマリ顔で返してくれた。
先輩と別れヒヨッ子一団が待つ所へ向かう。
「幡野良いのかよ?皆の意見聞かないで決めちゃって!」
遠藤君が歩く私の肩越しから話す。
「多分だけどね、多分・・思ったの私」
「桜井先輩は試して要るんじゃないかって」
「何を?」
「真剣な覚悟を!」
「え?」
「だってそうでしょ。新人の練習内容を2年生が考える?普通顧問の先生か部長さんでしょ?それを勝手に変更出来る分けないじゃん」
「・・それに本当はあの鬼ゴッコだって三枝先輩はやらないのに桜井先輩だけしてるでしょ。本当は先輩も色々と考えてくれていたんじゃないかって思うの・・・」
私は立ち止まり遠藤君を見据えた。
「だから私達も自分達の提案を真剣に見つめて桜井先輩にぶつからないと・・・」
「・・・そうだな」
遠藤君はそう言うと皆が待っている所へ走って行く。
そうしてヒヨッ子一団は明日の決戦に向けてピヨピヨと意見を飛ばすのである。因みに明日は土曜日である。