虹色のキャンバスに白い虹を描こう


白先輩本人に確認した。付き合っているというのはデマで、本当にただの噂だったらしい。

それなのに、彼女は相手の男の肩を持つばかりで、僕の忠告に全く耳を貸してくれなかった。あの男がどんなに汚らわしくて最低なのか力説しても、実際に傷つけられても。

ましてや、泣きながら僕に怒鳴ったのだ。


「どうしてそんなこと言うの……酷いよ。犬飼くん、何にも分かってない!」


ああ、そうだ、僕には分からなかった。白先輩がどうしてそこまであいつのことを庇うのか、到底理解できなかった。
でもそれは、至極簡単なことだったのだ。


「先輩には僕しかいないんです! お願いだから、僕だけを見て下さい……」


覚えている。放課後の美術室、白先輩と二人。
紛れもなく、「懇願」だった。あの日、計算も外聞も何もかも放り投げて彼女にぶつけた叫びは、ただの欲望でしかなかった。

僕以外の人のことを愛おしそうに、苦しそうに話しながら涙を流す白先輩に耐えきれず、ひたすらに喚いた。そして気付きたくないことに気付いていた。


『航には分からないかもしれないけどねえ、それが愛なのだよ』

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