虹色のキャンバスに白い虹を描こう


プリントに目を向ければ、そこには「退部届」と印字されている。じわじわと首を絞められているような、心臓が凍っていくような心地がした。


「……どうして鍵を」


鍵を、かけたはずなのに。白先輩が逃げ出してしまわないように、誰にも邪魔されないように。わざわざ部長に根回しして人払いまで済んでいたのに、どうして。


「先生に頼んでスペアキー借りたわよ。今日は美術室使えないって突然部長が言い出すから変だと思ったけど……犬飼くんの様子もおかしかったし、見に来て正解だった」

「僕がおかしい? 何を言ってるんです。僕はただ、白先輩を……」

「四の五の言わずに書きなさい!」


怒声が響き渡った。思わず口を噤んだ僕に、相手が言い募る。


(よう)のこと好きでも何でもいいけど、泣かせてんじゃないわよ! 見て分かんないの? おかしいよ。あんたが何言ったって絶対におかしい。大事ならこんなに怯えた顔させないでしょう」


白先輩を振り返り――途端、ざっと血の気が引いた。
彼女の目からは次から次へと涙が溢れ出ている。それだけじゃない。表情は明らかに強張っていて、小さい体が微かに震えていた。

全身から伝わる、僕に対しての嫌悪と恐怖。

僕は、――僕は、彼女に何て言った?

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