虹色のキャンバスに白い虹を描こう
友人の名を呼ぶ白先輩の声が震えている。
その声の主が美術室から出ていったのを目視すると、カナちゃん、と親し気な音で呼ばれていた西本先輩が浅く息を吐いた。
机の上に置き去りだったプリントを手に取り、彼女が僕の目の前でしゃがみ込む。
「……何であんたがそんな顔するかな」
渋い表情で呟き、西本先輩は自身のブレザーからボールペンを抜き出した。それをこちらへ向かって差し出してきたものの、僕が逡巡しているうちに、ため息をついて床に置いてしまう。
「最近、羊がずっと元気なかったの気付いてた?」
もちろん今なら即座に頷ける。だけれど、僕は今の今まで、それをきちんと理解できていなかった。まるで何かに取り憑かれたかのように、自分の意見を突き通すことで頭がいっぱいになっていたのだ。
「全部が全部、犬飼くんのせいってわけじゃないけど。まあ、その感じだと、反省してるってことでいいの?」
反省だなんて可愛いものではない。後悔に近い。
唇を噛んで、自身の腕をきつく掴む。ようやく一度首を縦に振った僕に、彼女は少しだけ表情を和らげた。
「急にしおらしくなるのやめてよ。……結構本気で叩いちゃったからさ、後でちゃんと冷やしなね」