虹色のキャンバスに白い虹を描こう
即座に否定し、違います、ともう一度念を押す。
絵から離れたのは、自分の中でのけじめだった。あのとき退部を選んだのも――ましてやあの日の出来事を白先輩のせいだなんて思うわけがない。全部自分で決めたことだ。
僕にとって絵なんてその程度のもので、本当に好きでやっている人からしたら、とんでもない冒涜だろう。
「ただの手段だったんです。あなたがいたから僕は絵を描きました。白先輩はいつも、きちんとアドバイスをくれる人だったから」
上手いから教えることなんて何もない、だなんて、他の人のように投げやりではなかった。
律儀に答えてくれて、助言をしてくれて、その時間だけは、僕が白先輩を独り占めできた。絵という共通のフィルターを持ち、コミュニケーションを図る大切な時間だったのだ。
「僕にはもう、描く意味がないんです。理由も」
これでは結局、白先輩のせいだと言っているようなものかもしれない。
弁解をするべきか考えあぐねていると、彼女が口を開いた。
「意味や理由がはっきりしてる人なんて、そんなにいないんじゃないかな。私だって友達につられて入部しただけだし、やめる理由がないから続けてるだけだよ」