虹色のキャンバスに白い虹を描こう


屁理屈だ。そう思う。
近所の小学生と遊んでいるだけだったら、こんなことはしなかった。だけれど、ここには色んな人がいる。ユイだってその一人だ。

だからこそ、タイガには言わなければならないと思う。


「赤がどんな色かは、人によって見え方が違う。それぞれの色につけられた名前だけが共通の印だ。赤いものを何色で描こうと、見た人が『赤いもの』だと思えば、勝手に脳内で赤色が補完される。その人にとっての、赤だ」


彼はきっと、これから沢山の出会いをするだろう。自分と異なる価値観に対峙した時、ただ「おかしい」と主張するだけではどうにもならないことが必ずある。
それに気が付くことができるかどうかは、単純に運次第な部分も否めない。今その機会を得られている彼には、見逃して欲しくないのだ。


「タイガ。君が僕のことを好きじゃないのは分かってる。でも、自分の言葉で誰かを傷つけることに、もっと敏感になった方がいい」


僕のように、誰かを傷つけてから後悔するな。深く潜って戻れなくなる前に、自分の「好き」と「嫌い」に向き合え。

タイガは黙り込み、それから口を尖らせて俯いた。


「……いーよ、分かったよ。おまえの勝ち。それでいいだろ」

< 127 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop