虹色のキャンバスに白い虹を描こう



「わたるくんじゃあねー」

「さやかちゃんも! ばいばい!」

「ばいばーい、気を付けてね」


子供たちに手を振り返す清の声が浮かれている。彼女は僕の方につと視線を移し、頬を緩めた。


「航先輩、すっかり人気者ですね」

「どうせ今日だけでしょ」

「そんなことないですよ。ほら、タイガくんだって最後は名前呼んでくれてたじゃないですか」

「呼び捨てだったけど」

「ふふっ、仲良くなりたいんですよ。きっと」


くすくすと嬉しそうに肩を揺らした彼女は、突然背筋を伸ばして真面目な顔になる。


「航先輩、ありがとうございます。『なないろ』に入ってくれて、……私のために、絵を描くって言ってくれて」


僕を見上げる清の目は澄んでいた。今日の彼女は凛としていて、泣く気配など微塵もない。


「こないだ、ちゃんとお礼を言えなかったので……本当に、本当に嬉しかったんです」


しっかりと腰から折って頭を下げる彼女に、むず痒くなる。
自分の選択を間違ったとは思っていないし後悔もしていないけれど、丁重に掘り返されるのは勘弁して欲しいところだった。

話の流れを変えたくて、「あー……」と中途半端な声を出してしまう。


「それはもう、いいから。ちょっと付き合ってよ」

「はい?」

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