虹色のキャンバスに白い虹を描こう
つい、とは。
今日の放課後は彼女と出掛けることになっていた。これまで清のスケッチに散々付き合ってきたわけだけれど、今度は逆に、僕のスケッチに清が付き合ってくれるらしい。
といっても、僕が彼女にそうしてくれと頼んだだけだ。自分一人ではさぼりかねないのと、そもそも彼女のために絵を描くのだから、という理由付きである。
帰りのホームルームが比較的早く終わったのでそのままここにやって来たものの、まさか清につけられているとは思わなかった。
「今の人、すごく可愛かったですね」
「まあ、そうかもね」
「それなのに振っちゃったんですか?」
彼女はたまに、デリカシーがあるのかないのか分からない発言をする。大体、一部始終を目撃していたのだから、聞かなくたって答えは明白だろう。
「付き合って欲しかったの?」
「そういうわけじゃないですけど……航先輩はやっぱり、どこでも人気者なんだなあって、思っただけです」
その言い回しは、むず痒くなるだけなのでやめて欲しい。
咳払いを挟み、早く行こう、と彼女に告げる。
「雨降りそうですね」
「傘持ってないの?」
「ありますよ! 航先輩がスケッチしてる間、私が傘さすのでご心配なく!」
「……それはどうも」