虹色のキャンバスに白い虹を描こう


たった三音、頭上に落とされた彼女の声に顔を上げた。


「これは、海を(わた)る船です。――あなたです」


初めから決めていた台詞のように、その言葉には一切の迷いがなかった。彼女の真っ直ぐな瞳に貫かれる。


「あなたの描いた天使の絵を見て、すぐに気付きました。この人にとってとても大切な存在なんだって」


ついさっきまで僕が眺めていた壁。かつて僕の絵があった空間に視線を移して、清が打ち明ける。


「あなたのしたことは、大勢の人には理解してもらえないかもしれません。それでも、私はあなたの絵に救われた。あなたが絵を描いてくれたから、誰かを好きでいてくれたから、私はここにいるんです」


あまりに眩しくて、あまりに痛い。痛いくらいに眩しい。
目を細めたくなる。けれども、細めてはいけない。逸らすわけにも、ましてや閉じるわけにもいかない。

見つめ返す。一音一句、絶対に聞き逃さないように、一瞬一秒、絶対に見逃さないように。
僕は、彼女と向き合いたかった。


「だから、私も絵を描きます。この世界を愛します。私の大切なものはあなただって――航先輩だって、どうしても残しておきたかった」

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