虹色のキャンバスに白い虹を描こう


「さやかちゃん来ないねえ……」

「具合わるいのかなあ」

「でもでも、元気だーって、じゅんくん言ってたよ」


暦は七月を教えていた。

清にはあれから一度も会っていない。
彼女が連続でサークルを休むのは珍しいらしく、子供たちの会話の内容は半分が清のことだった。

純は彼女が来ない理由を「ちょっと忙しいから」と大雑把な言葉で繰り返すだけだ。


「ねえねえわたるくん、さやかちゃんとおんなじ学校なんでしょー?」

「さやかちゃん何で来ないの?」

「わたるくんなんにも知らないー?」


服を引っ張られ、次々とクエスチョンが飛んでくる。

僕は迷った。何も知らないといえば知らないし、だけれど何となく、彼女の行動を変えたのは自分が原因のような気もする。その原因が分からないから困っている、とも言うが。

ねえねえ、とひたすらに呼び縋ってくる小さい手を眺めて、僕は口を開いた。


「清と、喧嘩した」

「ええっ!?」


すぐ近くにいた子だけではなく、周りにいた子までが驚いて寄ってきた。
喧嘩、というワードチョイスは少し間違えたかもしれない。しかし、小さい子相手に適切な説明が思い浮かばなかったのだ。


「わたるくんとさやかちゃんが?」

「けんかしたのー!?」

「なんでなんで!」

< 144 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop