虹色のキャンバスに白い虹を描こう
「さやかちゃん来ないねえ……」
「具合わるいのかなあ」
「でもでも、元気だーって、じゅんくん言ってたよ」
暦は七月を教えていた。
清にはあれから一度も会っていない。
彼女が連続でサークルを休むのは珍しいらしく、子供たちの会話の内容は半分が清のことだった。
純は彼女が来ない理由を「ちょっと忙しいから」と大雑把な言葉で繰り返すだけだ。
「ねえねえわたるくん、さやかちゃんとおんなじ学校なんでしょー?」
「さやかちゃん何で来ないの?」
「わたるくんなんにも知らないー?」
服を引っ張られ、次々とクエスチョンが飛んでくる。
僕は迷った。何も知らないといえば知らないし、だけれど何となく、彼女の行動を変えたのは自分が原因のような気もする。その原因が分からないから困っている、とも言うが。
ねえねえ、とひたすらに呼び縋ってくる小さい手を眺めて、僕は口を開いた。
「清と、喧嘩した」
「ええっ!?」
すぐ近くにいた子だけではなく、周りにいた子までが驚いて寄ってきた。
喧嘩、というワードチョイスは少し間違えたかもしれない。しかし、小さい子相手に適切な説明が思い浮かばなかったのだ。
「わたるくんとさやかちゃんが?」
「けんかしたのー!?」
「なんでなんで!」