虹色のキャンバスに白い虹を描こう
怒っている、というわけではなさそうだ。至って落ち着いたトーンで問いかけられ、首を縦に振――ろうとして、やめた。
「分からない」
「は?」
「だから、分からないんだよ。喧嘩ってほど言い合ったわけじゃないし、でもあれから清には多分避けられてる」
その理由も、分からない。僕は何一つとして分からなかった。
正直に申告すると、純が戸惑った様子で頬を掻く。
「あー……まあ、俺も実を言うと何も分かんねえんだわ。こないだからちょっと変だとは思ってたけど、元気だから大丈夫ーって、ずっとそればっかりでな」
少し引きつった笑みで大丈夫と繰り返す彼女の姿は容易に想像できる。純にさえその調子なのだから、なおさら僕とは話したくないのだろう。
明確に線引きをされたのは、清が僕に絵を見せた日だ。その前から予兆があったけれど、変化といえば、彼女が僕のスケッチに付き合うようになったこと。
分からない。それの一体何が問題なのだろうか。
「とにかくこれ、清に渡しておく。うまいこと言っとくからさ、ちゃんと二人で話せよ」
ひらひらと「しょうたいじょう」を掲げた彼に、今度は躊躇なく首を縦に振る。
近くに散在している画用紙を拾い、彼女の絵を思い出した。青くて鮮やかで眩しい絵だ。
窓の外は雨が降り続けている。清は、泣いていないだろうか。