虹色のキャンバスに白い虹を描こう
彼女は、間違いなく、そう言った。
あれほどまでに切望した僕の絵を、しつこくせがんだ僕の絵を、見たくない、と。
俄かに信じ難く、言葉を失う。しっかりと傷ついている自分がいた。
泣きじゃくった清が顔を上げ、僕を視界に入れた途端、くしゃくしゃな表情を更に歪める。きっと僕も負けないくらい酷い顔をしていたことだろう。
「……ごめんなさい」
踵を返して部屋を出ていく彼女を、止めることなんてできなかった。
純の焦ったような声が響いた後、足音が遠ざかる。
あっという間に一人となった空間で、自分の絵を見下ろした。
彼女の涙が染み入った部分だけが濃くなっている。それは絵の中の清が泣いているようにも見えた。
僕が描きたかったのは笑顔の彼女だ。僕が見たかったのは、笑顔の彼女だ。
泣かせたかったんじゃない。清が笑ってくれれば、僕はそれだけで良かったのだ。
窓の外はひたすらに雨が降り続けている。僕は、清を泣かせてしまった。