虹色のキャンバスに白い虹を描こう
心臓の周りが嫌な脈を伴って動いた。ぞわりと裏を這うような、そんな感覚だ。
「ええ、なに? ストーカーってこと?」
「いやいや、そんなやばいのじゃなくてさ……帰りに待ち伏せしたり放課後つきまとったりしてる子がいるって聞いたことあるの」
汗が滲んで喉が渇く。もしかしなくてもそれは――清のことなのではないか。
一人静かに焦る僕とは裏腹、彼女たちの話は進む。
「犬飼くんって女子の先輩に人気じゃん。そのつきまとってる子が一年生みたいでー、三年の先輩に目ぇつけられたんだって」
「えー……可哀想っていうか、自業自得? なのかな……?」
「ま、あくまで聞いただけだし分かんないけど。だって本当だったらやばいよ、がちでいじめられてるっぽい話だったもん」
本当だったらやばいって何だ。悠長に話している場合なのか。火のない所に煙は立たない、だったら清は――
「ねえ。その先輩って、誰か分かる?」
目の前の肩に手を掛けていた。口からはそんな言葉が出た。
瞳を真ん丸に見開いた彼女たちが、どこか怯えたような様子で固まる。
「お願いだから、知ってること全部教えて欲しい。大事な話なんだ」