虹色のキャンバスに白い虹を描こう



もうそろそろ梅雨明けだろうか。外の匂いがほんの少しだけ変わってきたような気がする。

昨日、純に電話をかけた。何度かけたって同じだ、俺から話せることはない、そう繰り返す彼に、僕は初めて反論した。


『話を聞きたいんじゃない。僕から、話したいことがある』


だから直接会えないかと頼んだ。純ではなく、清に。
了承してもらえるまで引かないつもりだったけれど、彼は「分かった」とだけ呟いて、家の住所を送ってきた。

電車を降りて傘をさす。土曜日だからか、街中は人通りが多い。地図アプリを立ち上げ、目的地へ急いだ。


「“美波”」


十五分ほど歩いた。送られた住所に該当する家の表札を確認して、間違いないと胸を撫で下ろす。立派な一軒家だ。

インターホンを押すまでに、三十秒かかったかもしれない。深呼吸をして人差し指を押し込む――寸前、がちゃりとドアが開く。


「うわっ……びっくりした、やっぱりお前か。全然入ってこねーから泥棒かと思ったわ」

「……悪かったな」

「まあ、入れよ」


促されるままに、中へ入るとする。
靴を脱いでいると、純が「悪いんだけど」と切り出した。


「清、お前に会いたくねえって。何回か説得したけど、無理なもんは無理らしいわ」

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