虹色のキャンバスに白い虹を描こう
頼むわ、と軽く言い捨てた彼に、わざとらしく音を立てて烏龍茶を一口飲む。やや力強くグラスを置いた拍子に、たん、と底が鳴った。
「純。――単刀直入に言う」
からりと、氷の溶ける音がした。重く湿った空気に似つかわしくない、軽やかな音だった。
「清が、いじめられてる」
言うことすら憚られる単語を自分の口からスムーズに取り出せたのは、この三日間ずっと、そのことばかり考えていたからだ。
水曜日、例の彼女たちから聞いた話は噂でも嘘でもない。そこから丸一日かけて情報収集した結果、その三年生の正体を突き止めた。三人組の女子生徒だった。
『え~? ああ、あのちっこい黒髪の一年でしょ。犬飼くんにしょっちゅう付いてって……』
『やっだ、いじめてないって! まあちょっとうざいなー、みたいなね?』
『教えてあげただけじゃん。あんたみたいなちんちくりん、犬飼くんが相手するわけないよって』
ぞっとした。こんなことを清にも三対一で抜かしていたのかと思うと、気が遠くなる。いけしゃあしゃあと下品に口元を歪めて笑う彼女たちに、絶句した。
「……僕のせいだと思う。今まで人と適当に関わってきたから、そのツケが回ってきたんだ」