虹色のキャンバスに白い虹を描こう
まだ以前の自分の方が周囲へのケアはできていた。恨みを買うようなこともなかった。でも、そんなの本当の僕なんかじゃない。
自分勝手で承認欲求の塊で、差し出された優しさを振り払う。それが僕だ。誰かを傷つけて、大切な人ひとりすら守れない、しょうもない人間だ。
ノートを見せてくれたショータに、ちゃんと「ありがとう」と言えなかった。僕のことを好きだと言う子の、目すらまともに見ていなかった。
粗雑に切り捨てたのは、先に糸を断ち切ったのは、僕の方だ。巡り巡っていま全て返ってきているのだ。
「知ってた」
テーブルの木目を見つめていると、純が呟く。
「知ってたよ、全部。清の担任がさ、こないだうちに来たから」
真っ直ぐと僕の目を見据えて、彼は至って冷静に告げた。気が付けばもうそこに軽さの混じった少年のような空気はなく、純は兄の顔をしていた。
「お前のせいって、何で?」
「……だって、」
僕がもっとうまくやっていれば良かったのだ。清が一方的につきまとっているように見えたのは、僕が彼女をぞんざいに扱っていたからではないのか。彼女だけじゃない。他の人に対してもきちんと対応していれば、清がやっかまれるようなことはなかったんじゃないのか。
「僕がいい加減だったから……適当だったから、こうなったんだ」