虹色のキャンバスに白い虹を描こう
俺だって思うよ。
純はそう言った。テーブルの上で組まれた彼の両手が、自らの罪を打ち明けるかのように力んでいた。
「ああすれば良かったこうすれば良かったって、俺も思う。あの時どうして助けてやれなかったんだろう、もっとできることあったはずなのにって思うよ。思ってるよ。ずっと」
「……ずっと?」
最後の単語が妙に引っ掛かり、彼に聞き返す。
それまで淡々と喋っていた純が突然、唇を噛んで黙り込んだ。
どこかで秒針が、止まることを知らずに動き続けている。静かなリビングの中、機械音が一秒ずつ正確に響いている。
微かな空気の振動は、どうやら純の吐息が原因のようだった。
「清は……中学の頃いじめられて、完全に色の識別ができなくなった。先天的な二色覚に、心因性要因の後天的な色覚の変化が加わってな。いわゆる、全色盲ってやつだ」
頭が真っ白なのに、目の前が真っ暗になっていく。そんな感覚に近かった。
肺が重くて喉も詰まる。早く酸素を取り込んで頭を働かせなければいけない、言葉を理解しなければいけないのに、呼吸を躊躇してしまうほど張り詰めていた。
「青とか黄色とか、今まで見えてた色が分からなくなったんだと。どんどん見えなくなって、昔のテレビみたいだーって、言ってたよ。普通に泣いてたけどな」