虹色のキャンバスに白い虹を描こう


「心の状態で良くもなるし悪くもなる。お前のおかげで、清の目は元に戻った。このまま清が楽しく高校生活送れるなら、何も心配いらないって思ってた」

「ねえ。いま、清は」


一つだけ、懸念事項があった。たった一つ、けれども一番、何よりも当たってほしくはない懸念だ。

僕の問いたいことを察したのだろう。純は首を縦に振った。横に振って欲しかった。縦に、振ったのだ。


「見えてない。前と、同じだ。……多分、昔のことも思い出したんだろ」


過去は、変わらないから、変えられないから過去なのだ。絶対に戻れないから、後悔して懐かしんで、時には蓋をしたくなる。
消せない、消えない痛みだ。傷つかなければ分からない。傷つけなければ分からない。痛みとは、そういうものだ。


「そんな顔すんな。お前は気付かなくて当たり前だよ。清と会ってなかったし、そもそもこうなるなんて夢にも思わないだろ」


だからな、と、純の言葉がそこで切れる。彼の白い頬が濡れていた。


「ばかなのはさ、俺なんだよ。清のことずっと見てたのに、これが初めてじゃないのに、何もしてやれなかった。どうせお前と喧嘩でもしたんだろって、本気で思ってたんだよ。ばかだろ、まじで。大馬鹿野郎だ」

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